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【40代からの起業】独占禁止法を味方にインボイス制度を乗り切る

ついに 会計 はじめる
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2023年10月1日より、インボイス制度が導入されます。導入後は、適格請求書発行事業者以外の請求書では、仕入税額控除が受けられなくなります。

これにより適格請求書発行事業者の買い手から免税事業者の売り手に取引の見直しが要求されることが予想されますが、やり方次第では下請法や独占禁止法に違反する恐れがあります。

特に免税事業者の多い個人事業主は無理な要求をされることが予想されますので、インボイス制度はもちろんのこと、下請法や独占禁止法、公正取引委員会についても学んでおく必要があります。

これにより不当な要求を受ける必要がなくなり、自身を守ることに繋がります。

会社員時代は大手の買い手でしたので、公取のお世話になったこともあります。そして、今は個人事業主の売り手である私が解説していきます。

個人事業主のインボイス対応についてはこちらの記事をどうぞ。

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公取に注意された事例

公取(公正取引委員会)に注意された事例がでてきています。

JT「インボイス制度」登録しない農家に減額通告 公取委が注意
2023年8月26日 14時24分

10月から始まる「インボイス制度」をめぐり、JT=日本たばこ産業が、制度に登録しない農家に対して支払額を引き下げると伝えていたことが分かり、関係者によりますと、公正取引委員会はこうした対応が独占禁止法違反につながるおそれがあるとして、JTに注意を行ったということです。

JTは、経過的な措置をとることで農家の組合と合意したとしています。

免税事業者にとどまるか、インボイス制度に登録するかの判断は、それぞれの事業者が行いますが、JT=日本たばこ産業は、制度に登録しない葉たばこ農家に対して去年、「消費税相当額を支払わない」と通告し、支払額を引き下げると伝えていたことが分かりました。

~中略~

インボイスを発行しない農家から葉たばこを仕入れた場合、JTは農家に支払った消費税分の控除を受けることができなくなるためとみられます。

一方、関係者によりますと、公正取引委員会は、こうした対応が独占禁止法違反につながるおそれがあるとして、JTに対し注意を行ったということです。

NHKオンラインより

イラストレーターや漫画家のようなクリエイティブな方たちも被害にあっています。

インボイス制度の実施に関連した注意事例について

一部の発注事業者が、経過措置(注)により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、取引先の免税事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合には、消費税相当額を取引価格から引き下げると文書で伝えるなど一方的に通告を行った事例がみられました。

(注)免税事業者からの課税仕入れについては、インボイス制度の実施後3年間は、仕入税額相当額の8割、その後の3年間は同5割の控除ができることとされています。

このため、公正取引委員会は、以下の発注事業者に対し、独占禁止法違反行為の未然防止の観点から注意を行いました。

【注意した事業者の業態及び取引の相手方】

注意した事業者の業態取引の相手方
イラスト制作業者イラストレーター
農産物加工品製造販売業者農家
ハンドメイドショップ運営事業者ハンドメイド作家
人材派遣業者翻訳者・通訳者
電子漫画配信取次サービス業者漫画作家

公正取引委員会より

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インボイス制度導入後はさらに増える?

インボイス制度が導入されると、適格請求書発行事業者が発行する適格請求書以外の請求書では、仕入税額控除を受けられなくなります。

そのため、買い手が課税事業者だった場合は、取引内容の見直しを要求されるでしょう。

  • 適格請求書発行事業者になるよう要求
  • 取引価格の値下げ要求
  • 取引の打ち切り

先述のような注意事例はもっと増え、公正取引委員会による勧告や排除措置命令も増えるのではないでしょうか。

特に免税事業者の多い個人事業主は無理な要求をされることが予想されますので、インボイス制度はもちろんのこと、下請法や独占禁止法、公正取引委員会についても学んでおく必要があります。

これにより不当な要求を受ける必要がなくなり、自身を守ることに繋がります。

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独占禁止法と下請法

独占禁止法

私的独占やカルテル・入札談合などの不当な取引制限、不公正な取引方法を禁止し、公正かつ自由な競争を促進するための法律です。

すべての事業者に適用されますが、とりわけ、中小事業者にとっては、取引先の不当な行為から自分の会社を守ってくれる、中小事業者の味方ともいえる法律です。

独占禁止法の内容です。公正取引委員会より引用しています。

  • 私的独占
    私的独占には「排除型私的独占」と「支配型私的独占」とがあります。前者は事業者が単独又は他の事業者と共同して、不当な低価格販売などの手段を用いて競争相手を市場から排除したり,新規参入者を妨害して市場を独占しようとする行為です。後者は事業者が単独又は他の事業者と共同して、株式取得などにより他の事業者の事業活動に制約を与えて市場を支配しようとする行為です。
  • 不当な取引制限
    「カルテル」と「入札談合」があります。「カルテル」は,事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為です。「入札談合」は国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札に際し、事前に受注事業者や受注金額などを決めてしまう行為です。
  • 事業者団体の規制
    事業者団体による競争の実質的な制限、事業者の数の制限、会員事業者・組合員等の機能又は活動の不当な制限、事業者に不公正な取引方法をさせる行為等を禁止しています。
  • 合併や株式取得などの企業結合規制
    株式保有や合併等の企業結合によりそれまで独立して活動を行っていた企業間に結合関係が生まれ、当該企業結合を行った会社グループが単独で、又は他の会社と協調的行動を採ることによってある程度自由に市場における価格、供給数量などを左右することができるようになる場合(競争を実質的に制限することとなる場合)には当該企業結合を禁止しています。
  • 独占的状態の規制
    競争の結果,50%超のシェアを持つ事業者等がいる等の市場において、需要やコストが減少しても価格が下がらないという価格に下方硬直性がみられるなどの市場への弊害が認められる場合には、競争を回復するための措置として当該事業者の営業の一部譲渡を命じる場合があります。
  • 不公正な取引方法に関する規制
    「自由な競争が制限されるおそれがあること」「競争手段が公正とはいえないこと」「自由な競争の基盤を侵害するおそれがあること」といった観点から、公正な競争を阻害するおそれがある場合に禁止されます。

    不公正な取引方法については,独占禁止法の規定のほか,公正取引委員会が告示によってその内容を指定していますが、この指定には全ての業種に適用される「一般指定」と特定の事業者・業界を対象とする「特殊指定」があります。

    一般指定で挙げられた不公正な取引方法には、取引拒絶、排他条件付取引、拘束条件付取引、再販売価格維持行為、ぎまん的顧客誘引、不当廉売などがあります。
  • 下請法に基づく規制
    親事業者と下請事業者との間の取引を公正にし、下請事業者の利益を保護することを内容とする法律で、親事業者による受領拒否、下請代金の支払遅延・減額、返品、買いたたき等の行為を規制しています。

下請法

商品やサービスの発注を行う資本力の大きな買い手の企業(発注者)が、資本力の小さな売り手の企業や個人事業主・フリーランスなど(受注者)に不当な代金の減額や返品、支払いの遅延などを禁止する法律です。

下請法は独占禁止法の補完する法律となり、下請事業者(売り手)に対する親事業者(買い手)の不当な取り扱いを規制しています。

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我々の味方

今回のインボイス制度導入の流れの中で、我々事業者の味方になりうるのは、独占禁止法の中のこれらの事項が該当すると思われます。

不公正な取引方法に関する規制

  • 取引拒絶
    「インボイス制度に登録しないと取引辞めますよ」
  • 差別対価
    「免税事業者なんだから消費税相当額は値引きしなさい」
  • 取引条件等の差別的取扱い等
    「免税事業者だから取引条件を悪くしておこう」
  • 優越的地位の濫用
    「うちは適格請求書発行事業者で大会社なんだから、わかってるよね?」

下請法に基づく規制

  • 下請代金の支払遅延・減額
    「免税事業者には消費税相当額を払う必要はないので減額しておきます」
  • 買いたたき
    「免税事業者なんだから消費税相当額は値引きしなさい」

先述の公取に注意された事例もこれらのいづれかが該当しているものだと思われます。無理で一方的な要求があった場合、そのまま諦めて鵜呑みにするのではなく、違法性はないかよく考えてみましょう。

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違法な要求は公正取引委員会に相談だ

取引先から商売上無理難題を突き付けられたり、一方的で強制的な値下げなどをされた場合、された側が公取に相談できる仕組みがあります。

「あの人にいじめられている。」と公取に助けを求めることができるわけです。

こうやって世に出てくる多くの事例は、いじめられた側が公取に相談、申告し、いじめた側に公取の注意や調査が入ることで世の中にあらわになるのです。その後排除命令や改善指導がなされます。

公正取引委員会 相談・申告・情報提供・手続等窓口
https://www.jftc.go.jp/soudan/

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私は昔、そこそこの小売業に勤めており、10年以上バイヤーとして仕入れをしてきました。仕入れる側なので、納める側の取引先(問屋やメーカー)よりも優越的地位にあったわけです。

取引先にも色々ありまして、当方よりも資本金も売上も大きな会社もありますし、中小の事業者もありました。

取引の継続、商品の仕入価格、返品の有無などは現場のバイヤーと取引先の担当者で商談をします。

「もっと安くならんのかい?」

「売れ残ったら返品ね」

「別の問屋から仕入れるから取引辞めるわ」

「今度改装するから手伝いに来てね」

こういうやりとりが行われている時代でした。買いたたき、優越的地位の濫用、取引拒絶にあたります。

ある時、公正取引委員会から社長宛に一通の封書が届きます。役員と商品部バイヤーが集められました。

公正取引委員会宛に、買いたたき、優越的地位の濫用、取引拒絶の疑義で取引先から申告があったので、調査が行われるとの事でした。以降、役員さんたちは公取のある霞が関に頻繁に呼び出されていました。

最終的には、優越的地位の濫用ということで、注意と指導をもらいました。

それ以降、商談や取引の際には、「双方の合意を確認し、商談記録を残す」「返品はしない」「取引先を従事させる際には日当を払う」などの決まりが設けられました。

以上は昔話ですが、インボイス制度導入の昨今においても、

買う側も売る側も、

適格請求書発行事業者も免税事業者も、

「双方の合意を確認し、商談記録を残す」という自己防衛は必須ですね。

双方合意しないとビジネスは成り立ちませんので。

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まとめ

  • 免税事業者には無理な要求が多くなる
  • 独占禁止法、公正取引委員会について学び、不当な要求を受けるな
  • 公正取引委員会に相談だ

ありがとうございました。