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家具屋が教える椅子の選び方

椅子 選び方
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人間、寝ている時間が最も多いのですが、座っている時間もかなり多いのです。
そこで多くの時間を一緒に過ごす「椅子」について現役家具屋店長兼バイヤーの私が椅子の選び方をお教えしましょう。

26歳の時にインテリアコーディネーターの資格を取得していますが、以降更新をしなかったので今では失効しています。インテリアコーディネーターです。

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椅子は多くの時間を過ごす相棒

世の中には座るためのものは椅子をはじめ、ベンチやソファーもあります。
ただ、自分だけの為に用意されるのはやはり「椅子」です。
パーソナルチェアとでもいいましょうか、自分専用の椅子やチェアがご自宅にあることは多いかと思います。

昔から使っているもの、家族が増えるときに買ったもの、引っ越した時に買ったもの、などなどタイミングはそれぞれあるかと思いますが、一様に言えるのはチェアは「長く付き合う」ということです。
つまり、長い時間付き合う相棒のようなものなのです。

私たちはチェアに座り、寄りかかり、時には立ち上がり(本当はダメですよ)全幅の信頼を置いて相棒に体を預けているわけですから、

  1. 長いこと安心して頼れること
  2. 座っていて心地よいこと
  3. 飽きずに好きでいられること

この3つが相棒に求めるものになります。

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椅子に何を求めるか

①長いこと安心して頼れること。②座っていて心地よいこと。
この二つは最新技術をもってすれば、適切な素材や形状を作る出すことは実現可能です。
しかし、意外と難しいのが ③飽きずに好きでいられること、なのです。

椅子と言えばだいたい4本足で、座面があって、背もたれがあって・・・
そんな感じで大体の形状は似通っています。
というのも昔に人達によって今の形まで進化してきたわけです。なので、デザイン的にはかなりの進化を遂げているわけで、新しいデザインがないとは言いませんが、やはり古典に影響を受けたものが多いです。
つまり、一番の近道は古典に習うということです。そして古典は今まで生き残ってきているわけですから、飽きられていないということになります。

いわゆる名作といわれる デザイナーズ家具であるチェアが ③飽きずに好きでいられること を満たすのではないかと考えています。
そして、その名作の素材や形状をアップデートすることで3つの条件を満たすチェアというのが実現します。

そんな方法があるのかと言えばあるのです。
ジェネリックプロダクツ というものです。

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ジェネリックプロダクツ

特許期間が過ぎ、製造権利が一般化された製品はだれでも製造・提供することが可能になります。
名作と言われるデザイナーズ家具もその一つで、優れたデザインそのままに製造・提供することが可能になります。
ですから、世の中には「正規品」と言われるものと、「ジェネリック家具」や「リプロダクト品」と呼ばれるものが存在しています。いづれも法律に準拠したものです。

ジェネリックのいいところは、名作といわれる家具たちが、その時代のニーズに合わせてディテール・仕様が変更され、より使いやすく、よりお求めやすくなっている点です。

正規品には正規品としてのブランド価値が有ります。
それらをリスペクトしながら、いいデザインと時代にあったアップデートされた品質をお手頃価格でお求めいただけるようになっているのがジェネリックプロダクツです。

イームズ DSW サイドシェルチェア
イームズ DSW サイドシェルチェア
イームズ DSW サイドシェルチェア
イームズ DSW サイドシェルチェア

例えばあの有名なイームズ DSW サイドシェルチェア は、数千円で販売されているものから数万円で販売されているものまで様々な価格帯があります。
この違いはなぜなのでしょうか。
※ちなみに正規品は64,900~68,200円で販売されています。

  • 素材の違い

パッと見はどれも形状は似ています。
数千円のものの多くの座面はPP(ポリプロピレン)素材です。
1万円台のものでABS樹脂のものが多いです。
当店取り扱いのシェルチェアは座面にFRPを使用しています。
FRPはイームズが世に出した時にハーマンミラー社で生産した素材です。本来のヴィンテージなシェルチェアと同じです。そしてFRPはヘルメットやヨット、ユニットバスなどに使われるように丈夫で長持ちな素材です。傷や色焼けも経年劣化の味として楽しめます。

PPやABS樹脂はそれはそれで軽量、安価などメリットはあるもののFRPに比べ強度が劣ります。
PPは早ければ1,2年で経年劣化が出初めて、ヒビや割れ、欠けが起きることもあるようです。
椅子は体を預けるものですから、私は丈夫で長持ちする素材が適正だと考えております。

  • 組立品か完成品か

安価な製品は組み立て式であることが多いですが、椅子としての本来の機能を発揮するのであれば、このチェア独特の座面の曲線に対して、適切な位置で脚部の金具が固定された状態、つまり完成品がベストではないかと考えます。
こうすることでシェルチェア本来の位置で座面と脚部を接合し、シェルチェアならでは座り心地が実現します。

  • まとめ

サイドシェルチェアを一例としてお話ししましたが、機能や品質を下げることで価格を下げるジェネリックプロダクツは多くあります。しかし、機能や品質を今の時代に合わせてアップデートさせながら価格も下げるジェネリックプロダクツというのは数少ないものです。
そのようなものつくりをしているメーカーや商社を見つけて案内するのが私の仕事でもあります。

安いだけで選んで安物買いの銭失いにならないようによく吟味されることをお勧めします。

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家具屋が選ぶチェア イームズ シェルチェア

チェアと言っても用途に合わせて様々な種類があるので、今回は比較的過ごす時間の長いダイニングチェアから3選です。

イームズ DSW サイドシェルチェア

『イームズ シェルチェア』

ミッドセンチュリーを代表するアメリカの工業デザイナー チャールズ&レイ・イームズ。
シェルチェアは1948年に近代デザイン製品をコレクションすることで他の美術館との差別化を意欲的にはかっていたMoMA(Museum of Modern Art)が、その活動の一環として家具非営利団体の共催で行った『ローコスト家具デザインコンペ」に出品した作品の一つで、見事に2位となった作品です。

その頃チャールズ・イームズは、成型合板を用いた大量生産可能な新時代のデザインを実現しようとしていましたが、成型合板での製作が困難を極めました。イームズは製品化をあきらめず、当時新素材であったFRPを使用して見事に製品化・販売されることになったのです。
型を利用してファイバーグラスウールを何層にも接着して最後に外形を整えて生産されるシェルチェアは、革新的な大量生産品として世に出されました。

  • 世の中のシェルチェアにはポリプロピレン、ABS樹脂など様々な素材があるのですが、こちらのシェルチェアは座面にFRPを使用しています。ヘルメットやヨット、ユニットバスなどに使われるように丈夫で長持ちな素材です。傷や色焼けも経年劣化の味として楽しめてしまうくらいです。(実はFRPはイームズが世に出した時のオリジナルの素材です)
  • 素材が素材なので柔らかさは少ないですが、FRPの持つ柔軟性のある背もたれと、深いシートポケット、そしてシート前面の緩やかなカーブが長時間快適な座り心地を実現しています。
  • 1948年に発表されてから今日まで衰えることのないデザインは、多くの人に愛されてきた証拠です。アート作品に触れあえる喜びはいつまでも冷めないでしょう。

横幅も控えめで立ち座りが容易なのでダイニングチェアに最適です。
またそのスタイリッシュなデザインは書斎などのパーソナルスペースの雰囲気をガラッと変えてくれます。アート作品ではありますが、丈夫ですので気兼ねなくガシガシ日常生活の相棒にお使いいただけます。

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家具屋が選ぶチェア アルネ・ヤコブセン セブンチェア

【アルネ・ヤコブセン】 セブンチェア

『アルネ・ヤコブセン セブンチェア』

デンマークが生んだ偉大なデザイナー・建築家アルネ・ヤコブセンの代表作「セブンチェア」です。
座や背を大きくゆったりとしたチェアとして、1955年に発表されました。

3次元曲面による座と背の一体成型となっており、背もたれには程良いしなりが感じられ、その座り心地の良さが体感できます。また、軽量でスタッキングも可能と、機能的にも申し分の無い名作チェアです。

こちらのプライウッドチェアはオリジナルから今の時代に合わせた改良が加えられています。

  • 脚部にステンレススチールパイプを使用することで、さらなる耐久性の向上を図っています。
  • 三次元立体成型による抜群のフィット感と、独自の曲線から生み出される木の弾力を再現する為に、オリジナルに描かれたラインを忠実に再現しています。
  • 粘りがあり丈夫なビーチを座面の芯を採用することで、しなりが有るのに「折れない」「割れない」を実現しています。
  • 座面裏カバーの導入や錆びにくいステンレススチールを採用するなど細部へのこだわりと使い心地が探求されています。
  • チェアの負荷が一番かかるのは脚先。エンドキャップは内と外の2重構造。 床を守り、身体の重みをしっかりと支え、 安定した座り心地を感じられます。外側のキャップが擦り減っても内側のキャップが床を傷から守ってくれます。
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家具屋が選ぶチェア ボーエ・モーエンセン シェーカーチェア

【ボーエ・モーエンセン】 シェーカーチェア

『ボーエ・モーエンセン シェーカーチェア』

デンマークが誇る偉大なデザイナー ボーエ・モーエンセンがF.D.B(デンマーク生活協同組合)の家具部門責任者として活動していたときにデザインしたのが、シェーカーチェア J39です。
師であるコーア・クリントから、一般市民の為の安価で質の高い家具を、という要求に対し、装飾を排したシェーカー家具にインスパイアを受けリ・デザインしたものです。
シェーカー様式の特徴は、細い背板がラダー状に(梯子のように)なっていることです。ボーエ・モーエンセンは、これを大きな一枚板によるデザイン処理を行い、より完成された美しいプロポーションを実現させました。

  • 当時の座面は藁ヒモでしたが、ペーパーコードへと変わっています。
  • こちらのシェーカーチェアは、背板を3枚の単版成型で製作しています。
    また、背もたれには厚みを出し強度をアップしています。
  • 前と後ろ脚の先端には丸みを持たせ、柔らかい雰囲気に仕上がっています。
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家具屋が選ぶチェア ハンス・J・ウェグナー ザ・チェア

ハンス・J・ウェグナー ザ・チェア

ハンス・J・ウェグナー の名作 ザ・チェア PP503。
1950年にデザインされたThe Chair / ザ・チェアは、プロポーションの美しさや掛け心地の良さなど、あらゆる点において最も完成度の高いチェアです。1960年にアメリカのCNNテレビで大統領候補ジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソンが、このThe Chair / ザ・チェアに座り、討論会を行ったことは有名です。

ザ・チェアという名称は、コペンハーゲンの有名なインテリアショップ「デン・パーマネンテ」の役員をしていたオスカー・フィッシャーが1950年に付けたもので、今ではこのチェアを表す一般的な呼称として定着しています。威厳のあるフォルムと素晴らしい掛け心地を持ち「ザ・チェア」と呼ぶにふさわしいチェアということでしょう。

  • 背もたれからアームにかけてのねじれたラインが美しい笠木は2個所で左右の手の指を交互に合わせるような形に見える”フィンガージョイント”という技法で接合されており、 この技法を使うことにより初期のモデルよりも強度が増し、魅せるデザインになっています。
  • 腰掛けるときに自然と手を置くように設計されているザ・チェアのアームは、ずっと撫でていたくなるような滑らかな質感とカーブが心地良く手に伝わってきます。
  • 脚部の中央部には膨らみがあり、最も太い箇所でフレームと接合され、さらに安定性を高めるためにわずかな角度がつけられています。

シンプルな構成のチェアですが強度を考慮しながらデザインと構造を上手く融合させた「ザ・チェア」の名にふさわしいチェアです。

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まとめ

  • 椅子は多くの時間を過ごす相棒
  • 名作は名作と呼ばれるべき理由がある
  • 時代に合わせてアップデートされていくジェネリックを選ぶべし

今回ご紹介したチェア以外にもあすすめできるチェアはたくさんあります。もちろんdaus labでもお取り扱いがありますので是非ご用命ください。

ありがとうございました。