鎧を着たサラリーマンか、実力で動かす経営者か。部長職の二極化──。
役職という鎧にすがり、内向きの調整と過去の延長線上の管理に終始する「従順なサラリーマン」に成り下がるか。それとも、看板に頼らず、自らの実力と覚悟で組織を動かす「経営者」として生きるか。
「部長 = 経営会議ボードメンバー」
これが、この会社の新体制における部長の正体です。
現場の細かな判断は課長権限に託して機動力を引き出し、自らはその権限を越える重要事案の決断と執行に全責任を投じる。確保された本来の時間のすべては、既存の不条理を排除する組織設計と、自分を超える次世代リーダーの育成という、この椅子に座る者にしか成し得ない使命のために捧げなければなりません。
しかし、現在の組織を直視してください。
次世代のリーダーを経営者レベルへと引き上げるための体系的な教育環境も、次期経営陣の座を賭けてライバルたちと命を削って競い合うような環境も、健全に組織の代謝を促す仕組みも会社からは与えられていません。そんな中、マネージャーたちは武器も持たずに経営の戦場へ放り出されようとしているのが現実です。
だからこそ、私たちは世界で最も普遍的な「武器」を脳内に実装しなければなりません。それが、ピーター・ドラッカーが遺したマネジメントの規律です。
【不変の思想】ピーター・ドラッカーが定義した「マネジメント4つの真実」
経営とは、事業の目的を達成するために、限られた資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を計画的・継続的に配分し、組織を管理・運営して成果を最大化する活動のことと言われます。しかし、それはただ成果をあげるための冷徹な機械ではありません。
組織を自走させ、不条理をハックするための思想の根底として、ピーター・ドラッカーが遺した普遍の定義をここにそのまま引用します。
「マネジメントがリベラル・アーツ(人間学)であるのは、それが知識の本質、自己認識、知恵、リーダーシップに関わるからであり、同時に、人間の幸せと社会の健全さに関わるからである。」
「マネジメントとは、組織をして成果をあげさせるための機関、道具、機能である。」
「企業の目的の定義として有効なものは一つしかない。それは、顧客の創造である。」
「組織の目的は、人間の強みを生産的なものにし、弱みを意味のないものにすることにある。」
—— ピーター・ドラッカー(『マネジメント・フロンティア』『マネジメント』『現代の経営』より引用)
マネジメントの究極の目的は、「人間の幸せと社会の健全さ」に関わること、すなわち、働く部下や関わる人々を幸せにするために行うものであると、ドラッカーは断言しています。
【現状と理想】あなたの「部の維持・管理」はすべて経営からの逸脱である
1.現状からあるべき姿への変革
多くのミドルマネージャーは、席を与えられた瞬間に「勘違い」を起こします。
現状の病:
部長となったことで、自らの役割を単なる部の維持・管理(内向きの調整)と勘違いし、組織に成果をあげさせるという経営の本質を見失っている状態。
あるべき姿:
自らを、会社という組織をして成果をあげさせるための機関(道具)であると定義し、社内の不条理を排して、強みが生きる組織設計に命を懸けている状態。
2.「顧客の創造」に繋がらない議論を冷徹に遮れ
部長は、単に部下を管理するためのポジションではありません。会社という組織をして、市場における成果をあげさせるための経営の機関(道具)そのものです。
ドラッカーが断言した通り、企業の目的は社内の都合ではなく、常に外部の「顧客の創造」にしかありません。したがって、経営会議や部内で交わされる議論が、内向きの調整や前例踏襲、手続きの正当化に終始しているならば、それはすべて経営の定義から逸脱した「不条理」です。
ボードメンバーであるあなたは、その内向きの議論を冷徹に遮り、「それで顧客の創造につながるのか?」「会社としてどんな成果をあげるための議論か?」を問い続け、軌道修正しなければなりません。
また、現場の判断を課長に託す本当の目的は、「人間の強みを生産的なものにし、弱みを意味のないものにする」ためです。課長や部下の細かなミスや弱みを責め立てる時間は完全に無駄です。それよりも、彼らの強みが最大化されて現場が自走するような「仕組みの設計」に、あなたのすべての時間を注ぐべきなのです。
【実戦の武器】組織を動かすために「内製化した8科目」の正体
マインド系の研修も大切ではありますが、それを実行に移すスキルがなければ宝の持ち腐れに過ぎません。スキルを会社が与えてくれないなら、自ら学べばいい。そのために、そのために、私はマーケティング、財務、組織心理学、ロジカルシンキングなど、経営に直結する「8つの実戦科目」を組織内で内製化しました。
これらは、単に部をうまく回すための小手先の管理術ではありません。会社の運命を背負い、部下の人生の成功を支援するための「生き方」を問うものです。
この会社に、自らの心血を注ぐ覚悟がないのなら、これ以上読み進める必要はありません。
──と言いたいところですが、私自身は心血を注ぐのを辞めて、次のステージ(ダブルワーク・起業)へ進むことにしました。
なぜなら、私が内製化したこの8科目は、その会社の中だけでしか通用しないローカルルールではないからです。あなたが今の会社の外へ一歩飛び出したとしても、一生通用する「経営的ビジネススキル」の塊だからです。
まとめ:普遍の規律を「外の世界」で使うために
組織をして成果をあげさせる道具になること。そして、内向きの不条理を冷徹に遮り、「顧客の創造」へとリソースを集中させること。
今回ご紹介したドラッカーの普遍的定義は、ぬるま湯組織のOSを書き換えるための最強の武器であると同時に、あなた自身が会社依存のサラリーマンを脱却するための脱出口でもあります。
- 「内向きの調整」を捨て、「顧客の創造」へ舵を切れ
- 「弱みの追及」を捨て、「強みが生きる仕組み」を設計せよ
- 「ローカルルール」を捨て、「どこでも通用する経営スキル」を磨け
次回からは、私が組織をハックするために内製化した「経営的ビジネススキル:怒濤の8科目」の具体的な中身へと、いよいよメスを入れていきます。会社の壁を越えて通用する、本物のスキルの解剖を始めましょう。
今回の講義のベースとなった「マネジメントのバイブル」
歪んだ組織のOSを書き換えるために、何度も読み返しました。「内向きの調整」というぬるま湯を排し、組織が成果をあげるためのガバナンスを敷く原点となった本です。本気で現場を動かしたいミドルマネージャーは、ぜひ手元に置いてください。

