部下が自分で考えずに問題を丸投げし、上司の肩へ次々と「次の行動責任」を飛び移らせている。結果として上司のカレンダーが他人の持ち込んだ問題の世話で埋め尽くされ、未来の組織設計のための時間が完全に消失している。
多くの組織が陥っているこの不条理な光景は、マネジメントの完全な敗北を意味しています。部下が直面している問題の、次の行動責任をマネジャーが引き受けた瞬間、二人の立場は逆転します。部下が上司になり、マネジャーは部下の部下になってしまうのです。
内製化8科目の第5の矢として、部下の肩から身勝手に飛び移ろうとする行動責任の逆流を完全に阻止し、チーム全員で共に考える環境によって組織を自走させる『組織マネジメント』の規律を解剖します。

行動責任の所在:リーダーの時間を死守する「先人の規律」
他人の持ち込んだ課題で自らのカレンダーを埋め尽くす怠慢を排し、現場を自立させるために私たちが脳内に叩き込むべき普遍の規律です。
「サルの次の動向は、上司と部下の双方が合意の上、一番低いマネジメント・レベル(=部下自身)で決められなければならない。サルは決して、上司の肩に飛び移ってはならない。部下の肩に返さなければならない」
—— ウィリアム・オンケン・Jr.(『1分間マネジャーの時間管理』より引用)
「組織の目的は、凡人をして非凡なことを行わせることにある。天才に頼ることはできない。天才はまれである。あてにできない。凡人から強みを引き出し、他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決定する。同時に、組織の役目は人の弱みを無意味にすることである。」
—— ピーター・ドラッカー(『マネジメント』より引用)
「最高のリーダーは万能ではない。最高のチームが万能なのだ」
―― トム・ラス(『ストレングス・リーダーシップ』より引用)
「たとえ、自分がする仕事を選ぶことはできなくても、どんな態度でその仕事に臨むかは、いつでも自分で選ぶことができる」
―― スティーブン・C・ランディン 他(『フィッシュ!』より引用)
【意識改革】丸投げの依存体質から「チームでの組織学習」への変革
上司が「ちょっと預かって検討する」という禁手を打った瞬間に、組織の統治インフラは崩壊へと向かいます。
現状:他人の問題の世話でカレンダーが埋まる「依存状態」
部下が自ら思考することを放棄し、問題をそのまま上司へ丸投げしている状態です。良かれと思って責任を肩代わりしてしまうため、リーダー自身の自由裁量時間が奪われ、組織の未来を描くためのコアタイムが機能不全に陥っている姿を指します。
あるべき姿:次のステップを踏む主語が常に現場にある「自走状態」
問題の次の行動責任が常に100%現場の手元に留まり、部下自身が主体的に動いている状態です。さらにその課題を個人の問題に閉じ込めず、チーム全員のラーニングの場で処理し、組織学習のインフラによって自走している姿を指します。
自由裁量時間を死守する「マネジメント進化の三段階」
ボードメンバーとなったあなたの時間は、会社の未来への投資時間です。「肩に載る猿」の寓話を片時も忘れず、マネジメントを以下の三段階へと進化させてください。
第一段階:ティーチング(依存の排除)
業務の基本を徹底的に叩き込み、部下が自分の肩に載っている「行動責任」を正しく認識させる段階です。ただし、答えを買い与え続ける対応は現場の依存心を肥大化させるため、早期に脱却しなければなりません。
第二段階:コーチング(個の自立)
1対1の対話において、傾聴、質問、フィードバックを駆使し、行動責任を部下の手元に留め置く技術です。「ちょっと預かって検討する」という対応は絶対に厳禁です。
部下はだいたい自分の中に答えや仮説を持っているものです。上司が使うべき武器は、「あなたはどうしたいのか」というキラーフレーズです。この問いを冷徹に投げ、部下の脳を強制駆動させて最低2つの行動案を提案させてください。
もし、自らの答えや提案を1つも持たずに丸投げの相談に来る者がいるならば、そもそも報連相に来る資格はありません。そのような手ぶらの相談は一切受け付けず、即座に出直しさせてください。面談が終わった瞬間、次のステップを踏むべき主語が常に部下である状態を徹底するのです。
第三段階:ラーニング(チームの自走)
ガバナンスの到達点です。課題という名の大きな猿を、部下個人とあなたの間に閉じ込めてはなりません。難解な課題が上がってきたら、それをチーム全体の場に投げ込み、参加者全員で共に考え、学び合う環境を設計してください。
1人で抱え込んで熟考するよりも、多様な視点を持つ複数人で知恵を出し合う方が、はるかに優れた解が浮かぶものです。その組織学習の結果として、アウトプットのQuality(品質)は劇的に上がり、解決に要するTime(納期)は大幅に短縮されます。「知る・わかる・行う・できる・分かちあう」のサイクルを組織に根付かせるのです。
現場で問題が発生した際、あなたが一人で抱え込んで決断を下してはなりません。チーム全員を招集し、ファクトを直視させた上で、「この課題を解決するためにチームとして何ができるか」を全員に問いかけてください。リーダーが審判として裁くのをやめ、メンバー同士が互いの思考に対してフィードバックし合うラーニングのインフラを機能させるのです。
誰かが当事者意識を欠いた発言をすれば、周囲のメンバーがそれを指摘し、軌道修正を迫る空間を作ってください。求めるべきは、あなたへの進言ではなく、チームとしての具体的な解決策です。
まとめ:ボス・マネジメントを捨て、リード・マネジメントへシフトせよ
個の能力やリーダーの馬力に依存する「ボス・マネジメント」を即座に捨て、全員が共通のビジョンに向かって知恵を出し合う「リード・マネジメント」へシフトしなければなりません。
- 手ぶらの相談は一切受け付けず、即座に出直しさせよ
- 「あなたはどうしたいのか」で部下の脳を強制駆動させよ
- リーダーが一人で裁くのをやめ、チーム全員で共に考えるインフラを確立せよ
行動責任のコントロール権をチーム全体へと分散・共有し、個ではなくチームで動く自走組織を確立すること。他人の持ち込んだ問題から自らの時間を解放し、その自由裁量時間を未来の組織設計のために注ぎ込んでください。
今回の講義のベースとなった「組織マネジメントのバイブル」
部下からの「丸投げ(依存)」を冷徹に排し、すべての行動責任を現場に戻してチームを自走させるための思考の原点となった本です。本気で現場を動かしたいミドルマネージャーは、ぜひ手元に置いてください。
